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095 会議

 先ほどの会議の内容を思い出し、雪平は心の中で小久保のバカヤローと呟く。
 声に出さなかったのは体面とかそんなものの為ではなく、それを否定できなかった自分がいたからだ。
 佐藤和夫を信じられない自分がいる。
 その事実に雪平はひどく苛立った。
 会議室を出てきた小久保を見た時、雪平は彼をにらみつける。
 小久保は少したじろいだが、入り口のすぐそばに立ち止まった。
 人気がなくなるのを待ってから、小久保はわざとらしい息をつく。
「雪平」
「なにか用ですか?」
「俺じゃない。あんたが待っていたんだろ?」
 なんで私があなたを待たないといけないんですか、と雪平は返す。
「言いたいことはあるみたいだったからな。文句があるなら言えばいい。俺はただ仕事をしているだけだがな」
 雪平はなにも言わなかった。
 ただ唇を噛み締めて、それでもなにか言い返そうと言葉を捜している。
「お前は二人、人を殺している」
 小久保が言う。
「そして普段はそれを咎められずに生きている」
「どういうことよ」
「お前のすぐ隣にいる奴が加害者でも、おかしくないって意味だ。人を殺すってのはそういうことだ。たいしたことじゃないやつもいる」
「それ嫌味ですか?」
「忠告だよ。佐藤和夫が犯人だって可能性も頭にいれておくんだな」
 そう言うと彼は歩き出し、雪平の横を通り抜ける。
 二人は一度もお互いのほうを見なかった。

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お互い仕事はできる人間。
(2006.11.19)