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 それは二年前のことだ。しかし生きる意味を復讐だけに見出した、その二年はとても長かった。
 記憶は風化することなくそこにあって、いつだって簡単に憎しみに変換される。

 牧村は拳銃を再び握り締める。
 これを扱ったのはたったの二度目だが、上手く当たった。
 それは致命傷でこそなかったが、認めさせるまで殺すわけにもいかない。
 たとえ殺してしまったとしても、牧村にはもう失うものはなにもない。
 鉛弾一発。
 脳天にぶちこんでやれば、この男は死ぬ。
 佐藤が牧村を呼ぶ。
 彼がここにいることを想定していなかった牧村は純粋に驚くが、近づいてくる佐藤を制する為、上に向かって威嚇射撃をした。
 耳障りな発砲音が、波紋を描いた心に凪を取り戻す。
 再び牧村を呼ぶ声がした。
 今度は佐藤ではない。雪平だ。
 牧村は銃口を広田に向ける。

 全てを自白させることはあっけなく終わった。
 牧村は彼に死の宣告をする。
 自白させた時点で撃てばそれでよかった。
 それでもあえて口にしたのは、どこかで見ているであろう、×に向けてのメッセージだったのかもしれない。
 雪平は銃を構え、牧村に向ける。
 広田を撃とうとすれば、彼女はきっとその前に撃つだろう。
 それでもいいと、牧村は思った。
 未練はないはずだった。
「撃たないで!」
 雪平が言う。
「美央を悲しませないで」
 表情が、歪む。
 それはひきょうではないのか、と牧村は思った。
 あの子の所にはもう戻れないというのに。

 気がつくと泣いていて、拳銃を手ばなしていて。
 フラッシュがたかれる。牧村は光の中にいた。

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牧村さん。佐藤の制止を振り払う為の撃つ仕草がすごく悲しかったな。
(2006.07.07)